まえのDesperadoがレシプロ戦闘機とすれば、このX-Elevenは、ジェット戦闘機でした。
 巨大な燃料タンクを抱え込むようにして、その向こうにある低めのステアリング・バーを握ると、260km/hまで刻まれた速度計がいやでも目に入ります。
 風防のないジェット戦闘機を半身を外に出して操縦すると、こんな雰囲気なのかと思いました。
 強く印象に残るのは、ある雨に祟られたツーリングで、帰路の東名高速を5速トップギアでクルージング中での出来事です。
 なにやらエンジン回転計が、3,500rpmから3,700rpmのあいだを行き来します。
 はじめは電子制御が不調で脈動(ゆらぎ?)しているのかと思いきや、実はあり余る駆動力に耐えきれず、スリッピーな路面にのるたびに駆動タイアがホイールスピン(空転)していたのです。
 このあり余る駆動力には、畏敬の念すら覚えたものです。

 このX-Elevenでは、内容の濃い単車生活を過ごしました。
 始めの1年間は、ライディングスクールに凝りました。
 ここでいうライディングスクールというのは、自動車教習所とは違うものです。
 操縦技術を高めたかったり、苦手を克服したかったりするライダーが、自分の腕を磨いて、単車に振り回されず安全運転に役立てるという主旨の講習。
 地域の交通安全協会や民間教習所とかが、定期的に開催しているものです。
 急制動のように教習所と同じプログラムもありますが、片手を離してのスラロームとか、微低速でジグザグに坂を登ったりとか、一般の方から見れば曲芸のようなプログラムもあります。
 ジムカーナ風なものからトライアル風のものまで、いくつかのスクールに参加しました。

 話はわき道にそれますが、ライディングスクールは「非常に狭い世界」であることが印象的でした。
 Aスクールでご一緒した人にBスクールで会い、そしてC走行会で知らない方に「X-Elevenさんって、このあいだAスクールにいらっしゃいましたね」と声を掛けられる世界。
 公道以外のモータリングも楽しみたい人達が、少ない遊び場に集中する世界です。
 僕の年代にとって、CB750というのは大型自二の代名詞。
 操縦性が素直で、丈夫で、たいへん魅力的な単車でした。
 ところが設計が古いこのナナハンで、現在の公道をリードするのは、それなりの気合いが要ります。
 それだけいまの自動車が、高性能になっていることを痛感します。

 僕にしては、車体を倒しこんでますね。
 なお和光HMSは一般的な舗装ですが、浜松HMSは二輪専用コースでサーキットコースと同じ特殊舗装。
 そのためタイアの食いつき感がまったく違って、僕レベルでも簡単に膝をするほど倒しこめるそうです。(ホントかな?)
 さて話を戻しまして、スクールに通って感じたことは、理論が伴う技能は若いライダーに負けないのですが、身体で覚える技能は若いライダーにはかなわないという、自分の限界でした。
 こうして月2回のペースで1年あまり、修行僧のように通いつめたライディングスクールですが、2年目からは飽きてしまって、ツーリングに軸足を移してゆくことになります。

 画像はHONDAのライディングスクール「和光HMS」で、CB750を走らせる僕(右のライダー)。
 コースのなか、パイロンをすり抜けてゆきます。
 このCBはヘッドライトの上にギア表示灯が付く教習所仕様。
 スクールにもいろいろなシステムがあって、この和光HMSは、教習所が休校の日にコースを借り切って開催されるもの。
 車両の持込みは禁止ですが、スクール側が用意したHONDAの各種車両(125〜1300cc)が乗り放題です。
 CB1300やVFR800など、ふだんはなかなか試乗もできない高額車にも乗ることができるので、楽しい。
 ただしCB400とCB750だけは、この教習所の教習車両でした。
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