笹ずし(¥105-)も紹介しておくと、これは古くから伝わる野趣豊かな押しずし。
 富倉の人々が戦国時代に上杉謙信に贈った野戦食ともいわれているそうです。
 笹の上に酢飯をおき、ゼンマイ、シイタケ、紅ショウガがのります。
 これも素朴な味で、笹の香りも爽やかで、美味しかった。
 ただ食べ方がよく分からない押しずしです。
 お米の粘着が強くぼろぼろと崩れないので、笹を持って口に運びましたが、笹にへばりついた米粒をとるために、さいごは箸を使います。
 隣のおばあちゃんを覗くと、笹を皿代わりに、さいしょから箸を使って食べています。
 不可解な野戦食‥
 ちなみに帰宅したあとに地元ご出身の方にうかがうと、笹を皿代わりにして、箸を使って食べていたそうです。
 店を出て駐車場で支度をしていると、茶髪の品の良いおばあちゃんに「今日はありがとうございました」と声をかけられました。
 この方が平成2年に富倉から中野に移転し、富倉の味を守り続けているオーナー。
 郷土食堂、文句なくお薦めします。  
 小布施の街を通過すると、12:00には信州中野の街で、お目当ての蕎麦屋へ。

「郷土(ごうど)食堂」 0269-23-0388
中野市吉田中川原1282-8
長野電鉄長野線「中野松川」駅の近く

 広い駐車場と立派な店構えで、すぐ分かりました。
 次々にお客さんが来店します。
 近所のビジネスマンやおばあちゃん、商談途中のグループなど、顔ぶれも多彩。
 皆さん自動車を降りると、にこやかに入店しています。
 このお店は、幻の富倉そばを出す蕎麦屋です。
 簡単におさらいをすると‥ 富倉は奥信濃の飯山と新潟県の北国街道(国道18号線)新井を結ぶ飯山街道(国道202号線)沿いにある山間の集落です。富倉の蕎麦はヤマゴボウ(山牛蒡)の繊維をつなぎに使った蕎麦で、このつなぎを使うことでそば粉の味が変わらないため十割そばのような香りと、つなぎ入りそばの喉ごしの良さとを同時に味わえ、シコシコとした独特の歯触りが楽しめます。ヤマゴボウは葉の繊維を使いますが、葉を手で揉んでは干しを繰り返して繊維を取り出す、大変に手間のかかったもの。また交通の不便な富倉の、しかも農家でしか口にすることができなかったことから、幻と称されたようです。(以上、インターネットの「信州そば処」から引用させていただきました。)
 僕は2009年に野沢温泉でいただいたことがありますが、あの美味しさをもう一度、味わうことができます。
 注文したのは、大ざる(¥1,100-)と笹ずし(¥105-)。
 蕎麦は“更科”ふう、わずかに緑がかった色で、ぼっち盛り。
 ぼっちとは束のことで、馬蹄形の盛り付けのことです。
 さっそく、ひと・ぼっちをいただくと‥
 期待どおり、これは美味しい。
 このつるつる感がありながら、強い歯応えを持つのが、富倉そばの魅力。
 蕎麦に「すする」蕎麦と「噛む」蕎麦」があるとするならば、富倉そばは間違いなく後者。
 それも、噛めばそば本来の味が口に広がる絶品蕎麦です。
 汁は薄味で、蕎麦の甘みとユニゾンで旨味を奏でます。
 そして薬味に「あさつき」という辛い球根をかじって、一緒に食べると、これもオツな味でした。  
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