皆さんは、「魔女の微笑み」という現象をご存じだろうか。
正式には『疑似好天』といって、山岳地で、悪天候と悪天候の狭間に、一時的に晴れ間が広がる特殊な自然現象です。
古くは八甲田山の死の行軍、そして最近では2013年7月の白馬岳の遭難事故もこれが原因という、登山者を遭難の危機にさらすいわば
“魔の青空”です。
思わずこの現象を思い出す、神秘的で、そして妖しい光景が広がります。
山肌に広がる紅葉の壁は、まるで誘うような美しさ。
路面に集中しなければならない僕を、「こちらを見てごらん?」と誘惑してきます。
あたりはしいんとして、静寂。
ですが、森羅万象が甘くささやきかけてくるような、怖ささえ感じました。
ここからがいちばん紅葉が美しく、また道も険しかった。
道路側は山の影になり薄暗く、向こうの山々はスポットライトが当たったように鮮やかな紅葉が続きます。
途中で「力水」と呼ばれる、登山者のための泉を通過。
崖に刺したパイプから、清水が斜面にかけ流されている。
あたり一面、落ち葉が泥になって、僕をいっそう苦しめます。
←崖にそって道がくねります。
ここもかなりの勾配で、愛機が後ろにずれてゆきそうでした。