ここはかつては温泉旅館だったが、現在は立ち寄りのみ。
 建物は想像していたよりもずっと年季が入っている。
 熱海温泉・大湯は徳川家康が入浴したこともあって、「出世の湯」ともいわれている。
 また四代将軍の徳川家綱の頃から御汲湯と称されて、毎年数回このお湯を江戸城に運んでいたという。
 由緒ある温泉だ。
 館内もそうとう古いものの、棟続きの湯屋は比較的新しく、母屋と違って明るい山荘風。
 壁を隔てて内湯と露天風呂とが並んでいる。
 内湯に先客がいたので、まずは露天風呂に。
 屋根がかかった半露天の浴槽には、青い伊豆石が貼られていて、目に眩しい。
 その中に源泉がかけ流されている。
 
 お湯はかなり熱い。
 この露天風呂で44度くらいだろうか。
 壁の湯口からちょろちょろと注がれる源泉は98度というから、熱湯だ。
 ここで先客が露天風呂に移動してきたので、内湯に移動する。
 内湯は少しぬるい。
 とはいえ内湯だって、一般的には熱いという温度だ。
 泉質はナトリウム-カルシウム-塩化物泉。
 お湯は透明度が高く、澄みきっている。
 手のひらにすくって鼻を近づけると、塩泉の匂いがする。
 肌あたりもさらっとした塩泉のそれだ。
 先客が内湯に戻ってきたので、再び露天風呂に移動する。
 そして熱いお湯を楽しんだあとに、庭の大石の上で涼む。
 身体が火照って真っ赤。
 「これが熱海のお湯だよなぁ」と、しみじみ思う。
 風呂からあがってからも、逆に陽射しの下でも快適に感じるほど。
 ただし真夏よりは、寒い季節のほうがお薦めできる温泉には違いない。
 玄関を出ると、海水浴客が次々と温泉めがけて歩いてくる。
 駐車場に駐めたタクシーから、運転手が入浴セットを持って足早に温泉に向かいます。
 日航亭は、こんな庶民的な立ち寄り湯。
 でも徳川家康が入った温泉ですから、貴方が天下をとりたいならば、外せない名湯かも。
 
 温泉を発つと、熱海市街を走る。
 街じゅう水着姿の海水浴客だらけだ。
 ふと見るとリゾートマンションの玄関で、茶髪のビキニ姿のお嬢さんが、しゃがんでタバコを吸いながら、スマートフォンを操作している。
 眩しい光景だ…
 この華やかさな情景が、日本のローマ・熱海だよなぁ、
 他の温泉街じゃ、外でビキニ姿は見ないもの、
 と、妙に感心する。
「熱海温泉 日航亭大湯」 入浴料 ¥1,000-
静岡県熱海市上宿町5-26 0557-83-6021
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