仙気の湯の開湯は、江戸時代(1596〜1868年)
 ともあれ、ここからは爽快な高速道路。
 姥捨SAから走り出すと、山道での苦労を吹き飛ばすように、アクセルを開ける。
 姥捨から安曇野までの区間を、上り方向この時刻に走るのは初めてだが、素晴らしく気持ちのいい高速ワインディングである。
 午前中の陽射しを浴びて、右に左にカーヴする広い道路を駈け抜ける。
 時おり野焼きの煙がたなびいてきて、ヘルメットの中に届く。
 左手に、麻績から筑北にかけての谷を見下ろす。
 路面のつぶつぶまで陽光を返してくるのを見ながら、その軽やかさ、明るさに比べて、下の山や谷はくろぐろとして重厚だ。
 この対比が著しいのが、麻績や筑北の面白さ、味わいなのかもしれない。
 安曇野ICから、国道143号線で松本の街に入る。
 空はいよいよ青くなり、おそろしいほど。
 目指すは浅間温泉の「仙気(せんき)の湯」で、前回訪れた際にはお昼休みで、入浴できなかったところだ。
 立ち寄り湯としては、というより温泉銭湯というカデゴリーだろうが、信州でも最古の銭湯のひとつ。
 これは外すわけにはいかない。
 建物は、まごうことなき、古い古い銭湯だ。
 ノレンをくぐると、中央に券売機、左右対象に男女の下駄箱、そして券売機の背中に番台と、伝統的なレイアウト。
 おかあさんがけだるそうに、入浴券を受け取ってくれる。
 先客は江戸っ子ふうのおじいさん、源泉を満たした2Lペットボトルを抱えて、出てゆくところ。
 僕をじろりと見て、「なんだライダーか」という表情を浮かべて
、手ぬぐいを音を立てて振り、水気を飛ばす。
 あゝ、タイムスリップして昔に戻ったようで、わくわくする。
 タイル張りの浴槽は、きれいに磨かれてぴかぴか。
 泉質はアルカリ性単純温泉、驚くほど透明な源泉が、かけ流されている。
 熱い、44度くらいある?!
 でも当初は熱いものの、少し経つと、むしろぬるく感じてくるのは前回の「枇杷の湯」と同じ。
 熱いときの、動くと肌がぴりぴりする感じもなく、快く瞑想にふける。
 恍惚とはこのこと。
 風呂あがりは肌がさらさらとして爽快。
 名湯、そうした誉め言葉しか思いつかない。
 立ち去るとき、番台のおかあさんは財布を持って買い物に出るところだった。
 無人になっちゃうよ?
 ま、そんな古風な温泉銭湯だ。
⇒前回の浅間温泉
「枇杷の湯」はコチラ
「仙気の湯」 入浴料¥400-
0263-46-5553 松本市浅間温泉3-4-22
barracuda-second017001.gif