R266を走り尽くすと、Uターンしてもと来た道を戻る。
いっそう晴れてくる。
木漏れ陽がきれい。
路面にわだかまる木の影を、次々と通過、それこそ飽きるほどに。
前夜の雨で湿った森が、いっせいに息吹きをあげてくる。
ミントを思わせる匂い。
そして草いきれの匂い。
そのなかを、軽い鼓動をたてて、突っきってゆく。
愉しい。
心底、愉しい。
これ以上の喜びを超えるものはないだろう、今後もおそらく。
板室温泉「大正村・幸の湯温泉」は、温泉郷から少し離れて、森を背にした一軒宿。
敷地は広大で、昔の学校のような建物だ。
鹿の湯、北温泉、大丸旅館の3大スターを制覇して、板室温泉の存在は忘れていたというのが本音です。
ふたたび文脈を再解釈して、「忘れていた板室温泉で那須に魅了される」に変えるかな…。
建物は老朽化が進んでいるけれど、館内は荒れてはおらず、不思議に気分が落ち着く。
なぜかというと、立派な木組みの木材から、ほんのり木の香りがするせいだ。
塗装が禿げたところも、アンティークで味わい深い。
脱衣室の鉄製ロッカーはぼろぼろだけど、脱衣カゴを並べる木製の棚は、まだまだ、かくしゃくとしている。
おしなべて大工さんの造作は、ヤレていないのである。
露天風呂で驚いたのは、白い防虫ネットですっぽりと覆われていた。
従業員の方に伺うと、昨年から森にアブが異常発生してしまった対策とのこと。
アブは刺されると痛いからなぁ…。
ちなみに白馬の「おびなたの湯」も、ずっと防虫ネットで覆われているので、こういう措置は珍しいことではありません。
話しは板室温泉に戻す。
お湯は透明度が高いのが特徴で、湯面の反射が無ければ、お湯が入っていないと錯覚してしまうほどだ。
泉質はナトリウムカルシウム硫酸塩泉で、けっこう熱め。
お湯には鮮度を感じます。
肌あたりはさらっとしていて、ひとことで言って淡麗な温泉だ。
「板室温泉/大正村・幸の湯温泉」
栃木県那須塩原市百村3536-1
0287-69-1126 入浴料¥800-