遺跡の発掘調査だけが、考古学研究のすべてではない
考古学入門T
考古学というと、「遺跡の発掘調査」を連想する。
確かに発掘が、考古学の一部であることは間違いないが、すべてではない。
文化財保護審議会委員
右島 和夫
そして、そのような調査が数多く集積されていくことにより、遺跡の属した時代の
特質、地域社会の特徴を明らかにして行くことに繋げていくわけである。
それゆえ、発掘して出土してくるものの豪華さ、希少性に一喜一憂するのは、
その場面に遭遇した場合の心情としては、理解できるが、考古学研究の本質的目的
実際、考古学者は、発掘の何十倍もの時間を、遺跡の調査資料・データの
基礎資料に振り向けているという。
遺跡の発掘そのものは、考古学の究極の目的ではない。
発掘調査の成果を通して、その遺跡をどう評価し、解釈するかが第一の
目的である。
考古学研究に従事する時、その大半は発掘以外の時間に費やしている。
とは無縁のものだという。調査して出土したものをもとに、どう考えるかが
重要なことになる。考古学は、決して「たから(財宝)探しの学問」ではないという。