Two-wheeled
  vehicle Life

 わが楽しき
     二輪生活
 はじめに、僕の祖父(父方のほう)のお話しをします。

 僕の父とその弟(僕の叔父ということになります)の昔話を総合してみると、地方紙の新聞記者だった祖父は多趣味な男で、いわゆる道楽者だったようです。
 祖父は当時珍しい大型バイクを、特ダネ取材用と称して、日頃から愛用していたそうです。(注)
 これは父の死後しばらくして、親族から聞きました。

 祖父はガソリン代も、取材費のなかで賄っていたのではないか? 
 そうだったら羨ましい‥いや、けしからん奴です。(笑)

 長男であった僕の父は、昔でいう長兄というやつです。
 ですからそんな道楽者の祖父に代わって、父がその子供の頃から、一家の精神的な支えであったようです。
 逆にいえば、父は祖父の道楽の被害者でもあります。
 というわけで僕の父は、亡くなるまで僕が単車に乗っていることに反対でした。
 単車は“けしからんものの象徴”というわけですね。
 いっぽう叔父〜父の弟〜のほうは、父よりも年少なせいか、ずっと自然体です。
 祖父の単車にも懐かしく、また、暖かい思い出があるようです。
 後部座席にも乗せてもらったことを懐かしそうに語りますし、法事の席でも「きみも単車に乗っているのかぁ。いやぁ遺伝だなあ」と嬉しそうであります。

 ちなみに祖父は、第二次世界大戦では従軍記者として、東南アジア奥地の戦地に赴きました。
 従軍記者として軍馬に乗る勇ましい姿が、古いアルバムに残っています。
 ただ復員後は、戦地で患った風土病の後遺症に悩まされ、単車にも乗らず穏やかな晩年だったようです。

 ここは、今までの僕の二輪生活を、ダイジェストに綴った回想録です。
 心のなかで、僕のナルシシズムをからかっていただくのが、正しい読み方。
 そんな気軽さで、これからしばらく、おつきあいいただければ幸いです。
(そうでもないと、15頁にわたるオヤジの回想を最後まで読むのは苦痛ですよね。
 なおこの頁は2008年4月に執筆したものを、2013年に校正いたしました。)

(注)
 祖父の乗っていた単車の車種は不明です。
 昭和初期の大型ですから、メグロ(のちのKawasaki)かなんか、でしょうね?
 陸王(HARLEY-DAVIDSONの国産コピー)などの特殊な車種でもない限り、当時の国産車の最大排気量は350cc程度です。
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2011年7月
信州・鬼無里街道を白馬へと向かう。
山、田んぼ、そしてこの先にも人里があることを示す電柱の列。