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 ふたたび国道143号線・松本街道を往きます。
 でもこの道も、「松本街道」よりも「青木峠」と言ったほうが、世の中ではとおり易い。
 田沢温泉と有乳湯との関係と、似たものがある。
 僕も青木峠と呼ぼう。
 青木峠は、“昼なお暗い”峠であった。
 うっそうと茂る森のなかを、道はくねってゆく。
 路面の状態は悪くないし、道路を守る擁壁も、がっちり造られている。
 身体も、有乳湯の温浴感が続いて、ぽかぽかと気持ちいい。
 でも、なんとなく気持ちが弾まないのは、うす暗いカーヴばかりが続くせいか…

 いいかげん陽射しを浴びたいと思っていたとき、やっと視界が開けたところに出る。(→)
 けっこう高いところまで登っていることに驚く。
 天空を司る仏、虚空蔵に守られた山々が見える。

 「この先、明通トンネルは高さ3.6m以上の車両は通行できません」という表示が現れる。
 峠はもうすぐだ。
←このあと意外にあっさりと、明通トンネルが現れる。
 現代の青木峠(1,040m)は、このトンネルとなる。

 確かに、背の低いトンネルだ。
 3.5mの車両だって、無理じゃないか?
 黄色い注意書きにも、大型車は真ん中を走るように推奨(?)してある。
 なおこのトンネルは、日本の国道トンネルでは現役最古のものだそうだ。
 開通は1890年だから、もう120年以上経っている。



 
 ここで話は横道にそれますが、僕の母方の姓は「青木」と言って、さかのぼってゆけばこのあたりの出だ。
 地侍であった先祖は、この青木の地名を姓にいただいて、青木茂太夫(あおき・もだゆう)と名乗ったそうである。
 ときは戦国時代。
 槍の使い手だったという言い伝えが残っている。
 この青木峠は、古くから上田と松本とを結んでいる。
 歴史のある峠である。
 上田、そして遠く須坂、小布施から、人馬はこの青木峠を越えて、松本側に抜けていった。