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 蕎麦屋を発つと、R327・槍ヶ岳矢村線を登り始めます。
 道路には、野生のサルがいて、ちょっとびっくり。
 僕を見て、面倒くさそうに道を譲ってくれるサルたち。
 行き止まりのピストンルートらしい、野性味あふれる出迎えです。
 さいしょは急勾配のヘアピンカーヴ。
 僕の意気込みを試すかのように、次々と現れるカーヴ。
 おまけに路面には、濡れた落ち葉がいっぱい。
 滑りそうで実に怖い。
 1kmほど険しい山道を走って、いいかげん疲れてきた時に、案内表示が現れます。
 「中房(なかぶさ)登山口まであと9km」
 おいおい… あと9kmも続くのか…
 ここからは、くじけそうになる自分との闘いになりました。 
 森の表情も、じわりじわりと厳しいものへと変化。
 撮影も緩やかな勾配に限られて、あとは落ち葉と小枝が泥のようになった急勾配の連続。
 ステアリング・バーを右に左にと回して、ゆっくり坂道を登ります。
 谷が深すぎて中房川の渓谷はまったく見えません。
 落ち葉でスリップしないようにと、そればかりに気をとられる。
 こんなスリッピーな急勾配で転倒したら、一人はおろか、二人がかりでも車体を起こすのは難しいでしょう。
 恥も外聞もなくステップから足を外し、下にぶらぶらさせてスリップに備えながら旋回します。
 来てみて、インターネットで見る中房渓谷には、紅葉の画像が少ない理由が分かりました。
 撮影ができないのです。
 紅葉が見られる場所は決まって急勾配で、パーキングブレーキがある自動車でも、停めるのは勇気が要るでしょうね。
 やがて、空には少し雲が出てきます。
 あたりが幽玄な雰囲気になってくる。
 「中房登山口まであと4km」
 そしてスノーシェッドを抜けると、視界が開けます。