これが霊泉寺温泉共同浴場。
 昭和の香り漂う古めかしい建物。
 寄り添う郵便ポストも、まだ現役です。
 一階は手前が男湯、奥が女湯。
 二階は集会場でしょうか、バルコニーの丸窓の意匠が凝っています。
 外壁のコンクリートは風化が進んでいて、どこか小学校の体育館を思わせます。
 「ボロっちいコンクリート造」と言ってはそれまでですが、何となく圧倒されるような、でも味わい深い建物です。
 入り口を入ると番台(受付)がありますが、えんじ色の座布団が置いてあるだけ。
 人を呼んでも、誰も出てきません。
 女湯からはおばちゃん達の笑い声が聞こえてきますので、係員も友達と一緒に朝風呂かもしれません。
 カウンターの木の賽銭箱にはコインを入れる隙間が開いていて、横にマジックインキで「入浴料 200円」と書いてある。
 あっ! 小銭あるかなっ? と焦ります。
 なにしろ温泉街には自販機ひとつありませんでしたから。
 小銭入れに、100円硬貨2枚を発見。
 やれやれ、驚かすなよ。
 中途半端な時刻だからか、入浴客は僕ひとり。
 浴室は、コンクリートの壁で、床はタイル張り。
 浴槽も青いタイル張りで、太めのパイプからお湯がどうどうと流し込まれ、浴槽の縁からじゃんじゃん溢れだしている。
 まごうことなき源泉かけ流し。
 排水口に流れてゆくお湯を見ていると、もったいない気持ちになる。
 さて身体を清めると、お湯の中に。
 やや熱めのお湯は、柔らかい肌あたり。
 泉質は、アルカリ性単純泉。
 ごくわずかに甘いイオウの匂いがします。
 印象的なのは、お湯の透明度。
 これほど透明な温泉も珍しいのではないか。
 とにかく澄みきっていて、とても気持ちいい。
 
 パイプの後ろにだけ窓が開いていて、網戸ごしに外の空気が吸える。
 窓に近づくと、女湯の笑い声が聞こえてきて微笑ましい。
 窓の外は裏庭になっていて、土の匂いと夏草の匂いがする。
 あゝ極楽極楽。
 広い浴槽のあちこちに移動して、恍惚のため息をつく。
 ここで入浴客が入ってくる。
 80代とおぼしき地元のおじいちゃんだ。
おじいちゃん「ここのお湯に入ると、一日身体が楽なんだよ」と笑っておられました。
 おじいちゃんにこの先の予定を訊かれたので、上田で昼食を食べるつもりですと答えると「えっ?上田に下りるの?暑いよ〜っ? およしなさい」と言われました。
 およしなさいって言われてもねぇ(笑)
 風呂あがりは、駐車場に戻って木陰のベンチで涼む。
 古刹は杉に囲まれていて気持ちがいい。
 ミンミンゼミの声を聞きながら、スポーツドリンクをごくごく。
 
 さぁて出発。
 もと来た道で国道に戻り、そのまま上田の市街に下りました。
 この日、8月5日は上田の花火大会。
 道路のあちこちに、時間道路規制の看板が立つ。
 街がざわついて見えるのは、僕の気のせいだけじゃない。
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霊泉寺温泉共同浴場
入浴料 ¥200-
長野県上田市平井字唐沢口2515
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