尖閣諸島の侵入事件(三月二十四日)    

今回の事件は、我が国政府の日本固有領土に対する危機管理に対する意識の欠如と、常日頃から靖国問題や教科書問題で中国の内政干渉を恐れる余り、国際紛争の火種と成る恐れの有る重要な領土との認識を持ちながらも、魚釣島(尖閣諸島)に自衛隊や警察官等を国境警備として常駐配備をさせる等、現場に適した監視行動を取らせる事を怠った政府の怠慢が侵入事件を許した背景に有って、尖閣諸島周辺海域を沖縄県内の一般犯罪防止の如く、所轄の警察や海上保安庁に任せる程度の感覚が大きな要因で有る。

つまり「日・中」間の重要な防衛国境ラインとする「領土・領海」意識感覚の低い政府の無策が事件を引き起こさせていると断言せざるを得ない。

又、マスコミ報道を見る限り、中国人七名が不法上陸をして現行犯逮捕をされたとの記事ばかりが目立つが、事前に香港から中国船籍「浙普漁」にて今月28日出港し、活動家が魚釣島へ上陸を図る為、抗議船で来るとの情報を入手していたにも係わらず、で有る。

つまり中国人活動家も事前に日本へ情報を流す事で、魚釣島への上陸は日本側から阻止される事を想定し、中国向けの売名行為で終わらせる「パフォーマンス」の抗議行動を予定しながらも、日本側の緊張感と警備怠慢から不法侵入が出来ただけに過ぎなく、いとも簡単に領海侵犯と不法上陸が出来て驚いているのは当の中国人達で有ろう。

 ◎開放的な国境

今回の事件で中国活動家の不法上陸は絶対に許せる事では無いが、毎年の如く繰り返される尖閣諸島(帰属問題)の重大さを外務省や公安警備当局が半ば放置状態にし、不法侵入者が来れば警告と丁重な取り締まり(放水を行う・暴行は加えない・侵入不審船に接触させて沈没をさせない)等の規定通りの制止行為を以って、その場凌ぎと問題回避を行おうとする程度の抑止と対処意識しか無く、これでは何時までも解決を図れる訳が無い。

更に問題なのは、国家防衛を主任務とする自衛隊は蚊帳の外に置かれ、抑止能力の低い海保や所轄地方警察に防衛ラインを任せている政府の無責任さを追求するマスコミ各社からのコメント等も一切無く、過去依り今日に至るまでの事件(不法上陸・領海侵犯)その物が全てその場限りの緊張で有って、翌朝には通常に戻る等、事件への反省と教訓が全く生かされていないからこそ中国に舐められて、毎年「主権侵害」が繰り返されるので有る。

仮に、今回、活動家を乗せて来た中国船籍の「浙普漁」が、平成13年12月に起きた日本海沖での海上保安庁と激しい交戦の末、沈没した北朝鮮の工作船同様に大量の武器(携帯型ミサイルや重機関銃等)を携えて侵入をしていたならば、結末はどうなっていたで有ろうか?

今回の事件を振り返ると中国船が24日早朝に領海侵犯し、発見と同時に巡視艇が無警戒で北朝鮮の工作船と同様に接近して警告と制止行動を行ったが、終には不審者(スパイ偵察員)がゴムボートで魚釣島に上 陸をした。

これ等の状況下で、隣接船体及び魚釣島の陸地から同時の抵抗交戦が行われていたならば、万が一を想定しない侵入者の通報で派遣された無防備な沖縄警察官20名を乗せた海上保安庁3機のヘリは、携帯用のランチャーで撃墜され、接近した制止行動の巡視船も撃沈させられる等、多くの海保や警察職員が海の藻屑と消え去り、恐らく日本側は完全に壊滅させられ、想像を絶する惨劇を招いていたに違いない。

前回の北朝鮮スパイ工作船と海上保安庁との交戦は、たまたま海の時化や天候等が悲劇から救っただけで、奇跡としか言えない位に運が良かっただけで有る。

又、今回は非武装の活動家で有ったため救われた事を念頭に置いて今後は領有権・主権侵害・国境問題等で外国政府が絡んだ事件の対応は陸海空の自衛隊と連携を確保し、海上保安庁や所轄警察程度の軽装備に依る事件の対応処理(機関の管轄区分)は直ちに廃止又は改正し、絶対に継続すべきで無い。

 歴史は繰り返される

さもなくば、今後益々事件が巧妙化と国際化(テロ組織の活動)し、島国根性の現状警備では多くの海上保安官や警察官等の無駄な生命が失われる重大事件が、発生し兼ねない要素も関係省庁は強く肝に命じるべきで有る。

今回の事件では交戦や武装占拠が行われなかったが、昭和二十九年十月二十八日に韓国国境警備隊が日本固有領土「竹島」に領有権を主張して不法上陸し、警告する日本巡視艇に対して銃撃を繰り返した上、島根県漁民を射殺する等の暴挙に依って一方的に武装占拠された「竹島」の如く、今後、仮に中国や台湾等の武装船(工作員等)に依って魚釣島が武装占拠された場合、又、国際法を無視する卑劣な韓国同様に国際司法の場で帰属問題を解決しよう等と中国や台湾に対して土下座をし、平和的解決への申し入れを日本政府が再び繰り返すつもりで有ろうか?

 ◎信念無き日本

如何に我が国が中国に舐められているかは、平成14年5月の中国瀋陽の日本大使館に於いて起きた事件を思い出して戴きたい。この事件では日本国に亡命を求める脱北者の家族全員が、日本大使館内へ無断で侵入した中国公安警察官に拠り連れ去られた上、大使館員は亡命者の保護も出来ずに中国政府の一方的な拉致拘束を許した。

此の時の日本外務省を始め大使館員の姿勢と不甲斐無さに、此れが主権を有する国家「日本」の代行代弁者なのか?と疑いたく成る程で、その事件は明らかに我が国に対する領土侵犯・主権侵害で有り、正に独立国家「日本」が中国から侮辱された「屈辱記念日」で有る。しかるに我が国政府の対応は世界が注目する中、中国に謝罪から始まり亡命者の日本返還すら拒否をされる等、強硬な中国政府の横柄な態度に屈し、土下座外交で事件の解決を図ろうとする等、大使館職員同様の不甲斐無さには唯呆れると同時に愕然とし、次の言葉すら出無かった。