<9月3日>
「チェーホフ的気分」ってこんな気分?

 チェーホフって、ご存知ですか?

 1860年生まれのロシアの作家で、彼無しにはリアリズム演劇は語れないという作品を書いた人です。「かもめ」「三人姉妹」「ワーニャ伯父さん」「桜の園」の4作品が
有名ですが、他にも1幕物のユーモラスな戯曲を沢山書いていたり、短編小説を山のように残しています。彼は医大を出て、お医者さんとして働く傍ら、貧しい家族の生活を支える為に、20代の頃から、短編小説を新聞や雑誌に書いていました。殆どその執筆料が家族の収入源だったそうです。 (私はバリバリの文系人間なんですが、理系で芸術に携わっている人って尊敬します。役者は文系の人が圧倒的に多くて、何となくその方が向いているのでは・・・という刷り込みがあるのですが、世の中にはもっと古くから、科学者で小説家で・・・という神様から二物を貰っている人が結構いるんですよね・・・羨ましい。)
 チェーホフはその他にも、当時は口に出すのも憚られたシベリア、サハリン島(地図で見ると、日本の直ぐ側、犯罪者や政治犯が島流しにされる場所で、衛生面も生活レベルもひどい場所でした)に自ら流刑者の調査に赴き、詳細な記録を残しています。
 当時はロシア自体が貧富の差が物凄く激しくて、文盲の人も多く、お百姓さんたちの生活はかなり悲惨だったようです。その状況を救う為、学校を建てたり、飢饉の為の募金活動を行ったり、無料で診療をしたりという活動もしていました。
 チェーホフは20代初めに、働きすぎから結核を患って、長い事家族にも病名を言わずにいました。(自分自身、結核だと認めたくなかったようです)結局44歳で亡くなってしまうのですが、今年がちょうど「チェーホフ没後100年」に当たります。
 今回の芝居は、1886年位から、晩年近くまでのチェーホフの「恋愛」(!)面に焦点を当てた作品です。
 チェーホフって、滅茶苦茶もてたんですよ!だって、写真を見るとカッコいいですもん!しかも有名作家!身長180センチ!(ただし、金銭面ではあまり恵まれてはいなかったようなので、三高ではないかも・・・)
 余談ですが、7月に軽く顔合わせがあったとき、出演者の女性陣全員が「ほんとカッコいいよね」と写真を眺めたほどです。
 出演者は全員実在の人物を演じます。チェーホフは牛山さん。(何となく目鼻立ちが似てるんですよね、チェーホフに)私はその妹マーシャです。このマーシャさん、チェーホフとは3歳違いなんですが、生涯独身で、チェーホフの執筆活動と生活を支えてきた人なんです。チェーホフは物凄く筆まめな人で、数え切れないくらいの手紙が残っています。実はマーシャが生前から手紙をきちんと管理していて、チェーホフ没後、それらをまとめて書簡集を出版、96歳(!)で亡くなるまで、チェーホフの博物館の管理をしていた方なんです。
 今回の芝居は、そのチェーホフの手紙のやり取りで構成されている、ちょっと変わった趣向のお芝居です。(マーシャがいたからこの芝居が生まれたんだ〜!となぜか威張りたくなる私・・・でも劇中唯一の肉親なので、恋愛模様は蚊帳の外でちょっと淋しい・・・)晩年に「兄チェーホフ」という本を出していて、チェーホフや彼女の生涯が詳しく書かれています。凄く読みやすくて面白いのでおすすめ!なんですが、古い本なので図書館にしかないかも。
 さて、そのマーシャの友人リーカはチェーホフと長く文通して、恋の駆け引きめいた手紙が沢山残っています。物凄い金髪美人だったそうで(写真をみると余り日本人好みではないかも・・・)、チェーホフへの報われない思いから、彼の友人と不倫関係に陥ってしまうのですが、それがあの「かもめ」のニーナのモデルになったと言われています。演じるは米倉紀之子ちゃん、「ジュリエットたち」に続いて友人役です。
 もう一人、「かもめ」に影響を与えた女性が、アヴィーロワ。女流作家で、チェーホフに出会った時はすでに既婚、子供もいたのですが、やっぱりチェーホフに惹かれます。逢引の約束をしていたのに、チェーホフが結核が悪化し、血を吐いて入院した為、思い叶わず・・・というエピソードもあります。この人も美人だったそうです。演じるは日野由利加さん。
 そしてやはり作家で、チェーホフと出会った時は15歳だったというシャブローワ。もちろん美人。演じるは同期の松谷彼哉ちゃん。
 最後はチェーホフが晩年にようやく見つけた伴侶、オリガ・クニッペル。芸術座の看板女優さんで、チェーホフの戯曲ではいつも主役を張っています。彼女と結婚したのはチェーホフ41歳の時。モスクワで舞台に立つ奥さんと、病気療養もあって、ヤルタ(という場所にチェーホフは家を建てていました)で暮らすチェーホフは別居婚。実は家族には結婚式を挙げて、新婚旅行を兼ねた療養旅行先から電報で知らせるという電撃婚(?)だったそうです。妹マーシャはクニッペルとは大の親友だったのですが、結婚直後はかなり嫉妬と複雑な思いで苦しんだようです。演じるは相沢恵子さん。
 そして、チェーホフの出版元編集者のスヴォーリン。チェーホフより26歳も年上ですが、仲が良く、一緒にヨーロッパ旅行にも何度か行っています。作家でもあり、戯曲も書き劇場も作っています。当時のロシアの出版界では物凄い大物、後年思想の違いからチェーホフとは距離が出来てしまいました。演じるは小山武宏さん。
 以上6人の舞台です。(またまた女性が多い芝居です)
今までやったことがないタイプの芝居で、どうなるのか見当も付きませんが、演出の菊池氏の手腕を信じています。
 実在の人物をやるのも初めてです。写真も手紙も残ってるからこそ、「どうしたもんかな・・・」と悩んでいます。
 あ、私が演じるマーシャも写真で見る限り可愛いです。かなりチェーホフに似ているかも・・・私と牛山さんが似ているかどうかはさておき、ずっと「お兄さん」の存在に憧れていたので、今回やっと「お兄さん」を持つ事が出来て嬉しいです。今までは長女という設定の役は何度かあるんですが、「妹」は初めてです。
 チェーホフに詳しくなくても、その恋愛模様に共感したり、「だから男って!!」と思ったり、色んな角度から見られる芝居です。ちなみに「かもめ」が結構絡んできますので、お時間あれば一読しておくとより面白いかも・・・
 チェーホフってなぜか日本では「暗い」イメージがあるようですが、この芝居を観ると、ちょっとそのイメージが変わるのでは・・・?

 いずれ稽古場風景の写真もUPしたいと思っています。ちょっと今回大変なので、サードほど定期的には無理そうですが・・・
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