考古学と遺跡
考古学入門U
実際に「遺跡」の発掘調査をやっている場面を見たことがあるだろうか。
掘る場所は、当てずっぽうで決めているわけではない。
きちんと根拠があって、その場所を箇所として決め、現れてくる内容もある程度事前に
想定できているわけです。
そのことは、われわれが生活している現代社会の眼前に広がる実際空間を思い画いてもら
えれば納得できると思う。
地域社会を構成している土地に根ざした形あるもの(これが遠い将来、遺跡になる)
に、住宅団地、工場、会社屋、役所、病院、学校、あるいは水田、畑等、さらには道路、
鉄道等の交通網等々が、相互に複雑に関係するなかで存在していることがわかる。
これらが、年月が経ち、そこに暮らす人々、動植物、さらには文字等を失い、
まるごと地中に埋もれたと考えればよい。
これらを発掘調査により、土地に刻まれた様々な生活痕跡として掘り出したとき、
様々な科学的方法を駆使して、失ったものを補い、いかに正しく評価、解釈するか、
これが考古学と言っても過言ではないだろう。正しい答え(歴史的真実)は一つ、
しかし、その正しい答えにたどりつくのは、非常に困難で、遠い道のりである。
なお、前述したように、有機的に関連した様々な遺跡から構成される一定の広がり、先
ほどの例示にのっとるなら、市域の中の「区(○○町)」などが該当することになるが、
これは「遺跡群」と呼称するのが適当である。