古墳学入門
古墳学入門T
私が、曲りなりにも古墳研究と関わり始めてから、かれこれ45年になる。
半世紀に近い古墳との付き合いがある。この間、途切れたことが一度もない。
ある日、ニュートンに知り合いの人が訊いた。「ニュートンさん、あなたはなぜリンゴが木から落ちるのを見て、引力の法則を発見したのですか?」。
するとニュートンは答えた。「ずーっと、古墳・古墳時代のことを考えていたから」。
自慢話のように聞こえたら恐縮であるが、私が、古墳に関する何百もの研究論文を執筆し、古墳をテーマにした研究で学位を取得できたのも、「ずうーっと考えていたから」である。
それでは、かれこれ半世紀近くずーっと考えていられたのはなぜかというと、好きだったから、楽しかったからである。
今回の「古墳学入門」の講義中では、一古墳・古墳時代研究者としての、私の古墳研究遍歴(全部話していたら、キリがないので、いくつかの転機になったできごと、古墳調査等を紹介する)の節目節目となった道程をたどることを通して考えてみることにしたい。
右も左もわからない段階から、研究が熟成していく具体的過程の中に研究入門の側面が見えると考えたからである。
その本論に入る前に、古墳研究上の基本的な事項を簡単に整理しておくことから始めたい。
文化財保護審議会委員
右島 和夫