4/30(土) pm5:00
大騒ぎの衣装選びもようやく終わり前号での写真のパープルの衣装を購入することを決めて
もとの服に着替えるために、更衣室に入った。
自分の洋服に着替えて、さっきの大騒ぎ中に近くの化粧品屋から物売りに来ていた男に
POLOのコロンを買うとやくそくしていたので、スーツの会計の前にまずコロンの代金を払う用意をしておこうと思い財布をあけた。 ところがなんと財布のなかに入っていた現金60ドルが
1ドルもない!!!
まさか??? さすがに犯罪多発地域で有名なシカゴサウスサイド!とおもったのと同時に
この店の奥の更衣室を案内してくれて、このパープルスーツに似合う帽子や靴をコーディネートしてくれた、この店の若いアフロアメリカンの店員の言葉を思い出した!
「ここには、他に誰も入れないから、荷物は全部おいていっていいよ。ぼくが見ているから」
しかしキャッシュは消えている! あれから誰もこの部屋に入ってきていないのを見ると
もうどう考えても盗んだのはコイツしかいないだろう!!
自分で見張っていると言って、自分で盗難をするなんて日本ではまず考えられないが
こんなマンガみたいな出来事がここでは起こり得るのである!
(それでも、全く持って自己管理の問題なので、それを指摘されてしまうと何も言えないのだが)
このことに気が付いてから、ぼくのアタマの中では超高速回転でいろいろなことがよぎった!
もしかしたら国際的犯罪組織が彼のバックにいて、カードもいま問題になっているスキミングなど
されていないであろうか? もしかしたら知らない間に他の2人も何か被害に遭っていないだろうか??
とにかくまず、ビビッたのは無論で、すぐにスーツをキャンセルして、とにかく友人2人を連れて
この店から逃げ出すことも考えた。
しかし、、それでは日本男児たるもののプライドがすたる!
肝をすえて、スーツを買うことを決めて
〜この店の中で、どこまでの人間が盗んだあの男の犯人の仲間で、キャッシュを盗まれた真実を告げた段階で誰がこの店でぼくの味方になってくれるのかを見極めようと心を決めた!!〜
まず日本人の仲間の2人 Taka と Yasu を更衣室に呼んで財布の中身を盗まれたことを話したら、当然のごとく大騒ぎになった。 もちろんそのときは日本語での会話だったのだが
それを見てなにかを察知したのか、
カーンがすぐに「何かあったのか?」 と聞いてきた。
前号で書いたパキスタン出身のこの店のオーナーである。
事情を彼に説明すると、彼はまず
「化粧品屋があずけて行ったコロンはどうするんだ??」 という話になった。
コロンはカードでは精算できないと言われキャッシュが盗まれて無いんだから買えるわけがないだろう!! と口には出さなかったが
ぼくは「いまはもう現金がないから、悪いんだが化粧品屋の彼には買えないからと言って戻してくれないか」 と話したら
カーンは「わかった、このコロン代は私が払っておくから」と彼は言った。
コロンをキャンセルしたことでコミュニティの和を崩したくないという彼の意図はすぐに理解できたが、ここで同時にカーンは、財布の中身を盗んだ店員とはこの件では繋がっておらず
盗んだのも単独で衝動的にサイフから現金を抜き取ってしまったのだろう、というのがすぐに推測できた。
とにかく、この店のオーナーであるカーンは、僕らの仲間である!!
ぼくはカーンに「キャッシュは盗まれたけど、とにかくこのスーツは買いたいんだ」と話した。
このときなぜだか分からないが、ぼくとカーンのあいだで言葉では説明出来ない絆が生まれたよな気がした。
店の外を見ると財布の中身を盗った当人は、どこか不自然な態度で店から3件くらい離れたあたりで誰かと話している。
カーンはそれを見ながら
「このストリートの上を見てみろ、カメラがあるだろう、警察が防犯対策のために見張っているんだ。このあたりでは金欲しさに殺人だって起こることがある。とにかく気を付けろ、もし何か起こったら私にいつでも電話しろ。夜中でも君たちをいつでも助けに行くから」
と彼の名刺はすでにもらっていたのだが、それに携帯番号を書き加えたものを僕にくれた。
ほかの二人が車をとりに行っている間に、クレジットカードで会計をするときに、カーンはスーツの値段から盗まれた金と同額60ドルを引いてくれた。
そして帽子だけは欲しいサイズがなかったので取り寄せてもらうことになったのだが、届き次第に
ホステルまで届けてくれると言うのだ。
もうこのころにはすでに、現金を盗まれたという恐怖の半分は、彼の人情によってどこかに吹き飛んでしまっていた。
会計が終わったころに、TakaとYasuが車を店の前に着けていた。
恐怖が去ったぼくの心には、もう少しこのあたりを散策したい、という思いがあったがそれも叶うはずは無く、トラブルにあったはずこの47thストリートを立ち去るのが、なぜかとても寂しく感じながら
次の場所を目指しこの場所を離れた。
これは後日談になるのだが、カーンがぼくがジャムセッションをするとう店に、前記の帽子を届けに来てくれた。
そのとき彼はぼくに言った。
「君の金を盗んだあの店員は、もうクビにしたから!!!!」
いまでも2、3週に一度はメールで彼とはやりとりをしている。
カーンはいまだにぼくのシカゴでのベストフレンドである!
シカゴでの最大のピンチを救って解決してくれた彼には、いまでも心から感謝している。
ここまで読まれている方には、なぜそんな危険をおかしてそんな危険なところにいったんだと、思う方も沢山いると思う。
ぼくにとって答えは一つ そこにブルースがあるから!
あるシカゴのブルースマンは言った、
「ブル−スとはCDショップでジャンルをカテゴライズするための作り出された言葉ではなく
奴隷としてアメリカに連れて来られて人間として扱ってもらえなかった私たちアフロアメリカンたち
の現実として起こったことを現したフィーリングだ」
それから何十年経ったいまでもアメリカ社会では、人種差別ははびこり本当の平等が無いから彼らはここに止まり貧しいながらも仲間たちで励ましあい生きている。
その貧しいなかでは、もちろん犯罪もおこり、ぼくはその被害者になってしまったのだが、
彼にとってはその60ドルあれば、普段買うことが出来ないものも沢山得ることが出来たのだろう。犯罪をしたことを見逃すつもりはないが、そうせざろうえない状況が、この場所にはあり
アメリカという国の勝者と敗者をはっきり作ろうとする社会構造が、ぼくの今回の盗難事件に決して無関係ではないということを、ぼくは皆さんにお伝えしなければならないと思っている。
ぼくはいまだに、彼らのフィーリングであるブルースはこの場所にあると、いま日本に帰ってきて思うようになった。
アメリカがけっしてスポットライトを当てようとしない影の一部がブルースであるとすれば今回に事件によって、ぼくは皮肉にも、はじめて音楽ではないフィーリングであるBLUESをはじめて
体験出来たような気がした。
そしていまの段階では貧富の差もあまり無い日本からはるばる海を越えて、観光ガイドにものせられないような見知らぬ場所にいって、日本とは違った環境に身を置いてみてそしてこの状況から被害に遭いながらも逃げ出さなかった自分がこのときに人生で一番の成長をしたんだと今では思っている。
最後にこんな記事を書いて宣伝するなんて矛盾していると言われるかもしれないが、シカゴでの恩を少しでも彼に返したい僕の気持ちをご理解いただいた上で
カーンの店の紹介をさせて欲しい。
〜Best Buy Clothing〜
212 E.47th Street,Chicago,IL 60653 USA
Tel/Fax:(773)624−5426
Mr.Oh Yeahの知り合いだといえば間違いなく大きな歓迎で迎えてくれるのは間違いないでしょう!!
ただしその時は、ぼくのように自己管理という忘れ物を皆さんはしないように!!