大瀬神社にあるこの張り紙(下)を見たときの高揚感は、いまでもよく憶えています。
 僕と同じく、この張り紙に感化されて、七不思議紀行に旅立った人の話も聞きました。 
 しかしこうして七不思議すべてを見終わって、謎として残るのは、個々の不思議ではなくて、この七つを選考した基準です。
 いつごろ、誰が、どうやって、この七つを選考したのでしょうね?

 NHKに「のど自慢」という長寿番組がありますが、歌を歌った学生にアナウンサーが促すと、その同級生がどやどやとステージに上がってくることがあります。
 はにかんでステージに上がってきた、付き合いのいい友だち‥
 伊豆の七不思議の中には、そういう不思議とは無縁の(?)、ただの友だちみたいな顔があります。 
 なにしろ伊豆半島には、この七不思議には含まれないけれど、力量的にはもっと謎めいた名所があるのです。
 ステージには上がってこなかったけれど、もっと歌の上手い友だちが居るわけです。

 憶測ですが、選考の鍵は、さいしょの大瀬神社にあるような気がします。
 というのも七不思議の筆頭にくるのは、いつも大瀬神社ですし、現地の案内にほかの七不思議を紹介しているのも、ここ大瀬神社だけです。
 もちろん神社が七つを選考したとは思えないものの、いまの旗振り役を買って出ているのは確かです。
 話は横道にそれて、では行政の対応はどうか、といいますと‥
 まず静岡県観光協会のホームページは、大瀬神社と石廊崎権現には「伊豆の七不思議のひとつと言われています」として、七不思議には距離を置いており、他の五つは紹介すらありません。
 そして各市町村を見ると、沼津市の産業振興部観光交流課(ちなみに大瀬神社は、沼津市に所在)のホームページだけが、伊豆の七不思議の存在を明記して、それぞれの紹介を公平に扱っています。
 他の市町村(伊豆市、西伊豆町、南伊豆町)は、七不思議の言及をしていません。
 ともあれ伊豆の七不思議には、手石の阿弥陀窟のように天然記念物に指定されているものもあれば、函南のこだま石のように、ともすれば割愛され、伝承としても埋もれてしまいそうなものもあります。
 でも七人とも、みんな同じ半島の仲間。
 これからも仲良しでネ。

 個人的にも、4年をかけたこのミステリー紀行は面白かったです。
 大人の洒落というか。
 満足しました。
 伊豆半島は、温泉も美味しいものも豊富なので、その点からも、七不思議巡りはお薦めです。  
〇大瀬神社の神池(2008年5月)
 神池で泳ぐ鯉は、妙に小ぶりで頭部が大きい。
 よく考えるとそこが奇妙で、謎めいている。
 大瀬神社はとても立派で、かつ、独特な雰囲気。
 
〇函南のこだま石(2010年5月)
 私有地のなかに、ひっそりとある。
 そんなところが、奈良・明日香村の「亀石」をほうふつさせる。
 
〇堂ヶ島のゆるぎ橋(2011年8月)
 ゆらぎ橋の残骸(朽木)を、現在の姿に飾り付けた
 当時の西伊豆町の人々の気持ちに、興味津々である。
 
〇石廊崎権現の帆柱(2009年5月)
 帆柱よりも、断崖絶壁に建てられた石廊崎権現のほうに驚嘆させられる。
 たいへんな建築技術である。
 
〇修善寺の、独鈷の湯(2010年5月)
 現物の独鈷が無いのが残念。
 温泉(足湯)に風情が無いのも惜しかった。
 
〇河津の酒精進・鳥精進(2011年4月)
 微笑ましい民話。
 
〇手石の阿弥陀窟(2011年10月)
漁船をチャーターする情熱まではなかった。
 
★伊豆の七不思議(まとめ)★  
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